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どちらでしょうか

おはようございます、さいとうです。

 ひとつ先の信号が黄色になったとき、交差点の角に白髪の婦人が見えました。横断タイミングが合わなかったのか、前にも横にも渡らなかったようでした。

 信号が変わったので道を渡りましたが、彼女は歩こうとしません、右に左にときょろきょろしています。迷ったのだろうか、帰り路がわからなくなったのだろうか、気になって横断歩道のこちら側から振り返ってみましたが、彼女は先ほどと同じ場所であちらをみたりこちらを見渡していました。

 これは戻って声をかけてあげた方がよいだろうかと思った矢先、信号の点滅を追いかけるように彼女がこちら側に渡ってきました。「あのお」と声をかけれました。あらためて彼女の装いをみると部屋着そのものの軽装でした。ちょっと気になります。

 「うみ・・・こうえん・・・どっちで・・・」、その時ちょうどダンプカーがエンジンを吹かして通り過ぎたせいで上手く聴きとれませんでした。怪訝な顔をしてしまったのでしょう、彼女がふたたび口を開きました。

 「うみの みえる こうえんは どちらでしょうか」

 ゆっくりとした話しぶり、今度はよく聞き取れました。海が見たいのか、たしかにここは海岸線には近いのだが、海の公園までは南に十キロ近くはあるし、海釣り公園は反対側に数キロもある。この軽装だからそこまで行くとも思えません。「どこですか」、聞き返しました。

 「海の見える公園はどちらでしょうか」とはっきりと聞こえました。もしや「海の見える」場所にある「公園」ではなく「海の見える公園」という名前の公園に行きたいのか。ここを真っすぐ数百メートルほど海に向かうと、そのような名前の公園があり、一度だけ訪れたことを思い出しました。

 「ここをまっすぐ進めばすぐですよ」と手で方角を示して説明しました。

 最近、自分も年齢を重ね、親世代もすでに80代、90代にさしかかっていることもあり、認知症に関して話題にすることが増えてきました。市中や出先で普通のように見えていても、佇んだり座ったりして動作が止まっていたり、何度もあたりを見回していたりする高齢者をみかけると、もしやと頭をよぎります。

 彼女は無事に「海の見える公園」に辿り着けただろうか、本当は帰り路がわからなくなったのではないのだろうか、公園まで連れて行ってあげた方がよかったのだろうか。信号が青になっても佇んでいた姿が脳裏に尾を引きました。

さ。

EMIRPs Today(2025-10-20)#2797 どちらでしょうか

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