おはようございます、さいとうです。
気になっていた定食屋を探して、スマホの地図をのぞき込みました。表通りでは見つからないのも当然だ、一本、裏に入ったところにピンが立つ。
細道を右折すると白い幟がはためいていました、あそこだろう、あたりをつけて進みました。建物の左端、間口が二間ほどの店構えでした。ノッチ式の木の扉を引く、カチッと鳴って開きました。「一人ですが、入れますか」。
店員さんが出てきました、今、満席だという。肩越しに見えるのは、二人掛けの卓が三つとカウンターが三席で、いずれも埋まっていました。外でよろしければ、足踏みミシンの台を卓に、前に床几(しょうぎ)が置かれていました。
床几に腰掛けて待っていると、お客さんがちらほらやってきます。その度に、店員さんが出て来て、満席でしばらく待つことになることを詫びていました。やり取りをぼんやり眺めていました。日陰で少し寒くなってきました。
カチッ、しばらくして食事を終えた客がひとり出てきました。「お先です、中にどうぞ」、ああ、店の関係者なのだろうか、「ありがとうございます」。足早に去って行きました。続けて先ほどの店員さんが顔を覗かせ、今片付けますねと。
「余剰・規格外野菜、未利用魚、ジビエの食堂」と自己紹介するそのお店は、もったいない食堂と銘打つ。「もったいない食材がなければお休みします」と謳っています。今日は営業されているのだ、どんな献立てだろう。
壁に、焼魚定食、刺身定食、アジフライ定食にカレーなど今日の料理が掲げられていました。焼魚には何種類かあるようです、おすすめを尋ねてみました。私なら鯖か金目ですと、女将さん。金目鯛の一夜干しがあるのか、旨そうだ。少し時間がかかりますが宜しいですか、ええ、お願いします。
お待たせしました、料理をたっぷりと載せた四角い盆が運ばれてきました。金目鯛の香ばしい匂いが立ち上がってきました。
さ。
※雑感
これは三浦海岸に大根干しを見に行ったあとに、お昼ご飯を食べたお店です。十名も入れば窮屈な小さい店で、丁寧に作る優しい料理が供されていました。離れて座った客同士が卓越しにおしゃべりをしていました。温泉の様子、ヤギがいる場所、サッカースクールのこと、身近な話題がぽんぽん飛び交います。まだ一年も満たない店ですが近所で愛されていることがうかがえました。地産地消、フードロスへの対応、近隣生活者の憩い、美味しく気取らない食。そこには、スマホの中では得られないものがありました。