廃線跡は、一部を公園に設えたり、商業施設にとり込んだりして活用される。まるっと自転車道として再生した代表例は、つくばりんりんロードでしょう。
筑波山の西麓には、かつてJR常磐線の土浦駅と水戸線の岩瀬駅の間の約40キロに筑波鉄道が走っていました。1918年(大正7年)開通の同路線が70年の幕を閉じたのは1987年4月1日、奇しくも国鉄がJRへと動いた民営化と同じ日でした。
茨城県の壮大な取組がここから始まります。筑波鉄道の廃線跡の全線を自転車道とする整備計画を企てて、1992年に「岩瀬土浦自転車道線」として認定し、約十年ののち2002年に全線開通しました。愛称は「つくばりんりんロード」。
40キロというと、東海道本線では東京から戸塚の距離に相当します。鉄道が敷かれていたわけですから、急坂があるわけではなく、土浦駅と岩瀬駅との間の勾配は標高差で50メートルほど、ほぼ平地のように感じるなだらかさです。
りんりんロードの走りやすさは、その坂のない地形ばかりではないよう。
開通から30年も経ているのに路面は丁寧に補修されており荒れも少なく、昔の乗降駅舎は休憩所として整備され、数キロおきに気軽に休むことができます。鉄道跡ですから、当然に道路と交差する場所もありますが、一旦停止は一般道の自動車側、自転車は注意して走行と表示されているところもあり、自転車の道路として優先され安心して走れる環境が護られています。
筑波山の優美な姿をあちらからもこちらからも愛でられ、またある場所は茨城特産の蓮根畑の蓮の花の中を、また別の場所では実りで頭を垂れる稲穂の水田を通り抜け、桜並木が続く木陰を潜り、すれ違う人たちと会釈を交わす。
今、全国各地で鉄道の不採算路線のあり方や廃線に関する議論が見られます。自転車道としての整備も良いものだとあらためて思いました。
さ。
※雑感
「つくばりんりんロード」は、2016年には霞ヶ浦の湖岸を一周する約130キロのサイクリングロードと統合され、「つくば霞ヶ浦りんりんロード」と呼ばれる日本最長級のサイクリングロードが出来上がり、2019年のナショナルサイクルート制度の第一回に指定されています。
「つくばりんりんロード」の総工費は80億円超と言われており、その後も保守整備は推進されています。もちろん、鉄道のように「乗車運賃」で採算を図るわけではなく、通行する自転車が課金されることもありません。観光収入など間接的な経済効果を見込んだ社会資本のひとつの形なのでしょう。